抜戸岳(標高2812m )
新穂高センターからピストンルート
登山日 2021/11/20(土)
総歩行距離 16km/累積標高差↑1900m↓1900m
体力度★★★★★
危険度★★★☆☆
絶景度★★★★★
※あくまで個人的な感想と計測
【コースタイム 】
新穂高センター→笠新道登山口→杓子平→抜戸岳(ピストン)
・登りCT5:45 →結果6:40
・下りCT4:03 →結果4:30
・トータルCT9:48 →結果11:10
※結果のタイムは休憩時間も含む
【登山口へのアクセス】
車で新穂高センターへ。登山者用の無料駐車場は新穂高センター手前のトンネルの途中から深山荘の方へ曲がるとあります。150台は停めれます。満車の場合は新穂高センターの近くに有料駐車場がいくつかあります。夏季は無料駐車場の真ん中辺りに仮設トイレ有り。新穂高センターにも24時間使用可能な綺麗なトイレがあります。
車以外で来る場合は富山、長野松本、高山からのバスもあります。
【地図等の詳細データはヤマップにて】
https://yamap.com/activities/14406673
笠ヶ岳を眺めながら何を思ふ
真っ青な空を見上げながら雪の急登を進んだ。数歩進んでは立ち止まり、また数歩進むと今度は膝上まで踏み抜いて動けなくなり、体中にどっと酷い疲労感が押し寄せる。アイゼンとワカンをわざわざ持って来たのになんで使ってないんだろう。ただの重りでしかない。振り返ると広大な白いカールと穂高の峰々が広がっていて、本当に凄い場所に来てしまったんだなと改めて実感した。なんとか体勢を整えてまた歩き出すと今度は両腿が攣りはじめ、急いでストックを地面に突き刺してもたれかかり、足に負荷をかけない様にしながら痙攣するのをやり過ごした。
辛い。随分と前からずっとこんな感じだった。目指す稜線は見えているのに一向に近づかず、そして山頂はその稜線の遥か先にある。なぜ杓子平で引き返さなかったのか。もう今日はダメだとあの時点で分かっていたはずだし、目の前に広がる巨大なカールを進めばもっと過酷になる事は目に見えていたはずだ。
これまでもこんなに過酷でどうしようもない経験をした事が何度かある。心身共に追い込まれて、絶望して、それでも後先考えずに前進して。そしてなんとか登頂出来て、真っ暗な登山道を下りながらも無事に下山出来てハッピーエンド!みたいな。
今日は天候も良いしそんなに危険な箇所も無さそう。こんなグダグダな登山でも、時々足が動かなくなっても、我慢して進めば登頂は出来る気がしていて、また今回もハッピーエンドを迎える事が出来る様な気がする。でも無事に帰れても間違いなく夜だろうけど。
そんなどうしようもないリスクだらけの登山をいつまで続けるつもりなのかと言ってる自分が最近いる。仕事だと結果も大事だけどプロセスも大事だと思っていて、良い結果を出す為には十分な準備と対策が必要だし、なるべくリスクを回避しながら自分の力量に合ったやり方でスマートにやりたい。そして行き当たりばったりで人に迷惑をかける様な無責任なやり方はしたくない。山登りも同じなんじゃないかと。どんな山でも一般登山道なら誰でも頑張れば登頂出来てしまうし、登頂するだけなら凄くもなんともない気がする。計画と大幅に乖離することなく、どんなコンディションだろうとコースタイムぐらいの時間で登りきり、体力的にも少し余裕が残ってるぐらいが望ましく、日が暮れるまでには下山するのが理想。それが実力なんじゃないのか。その為に色々な対策も練るし、日頃から準備もする。山頂にいつ着くのか見当もつかず、足も動かなくなってる時点でもう今日の試合は負けなんだと思う。こんな命がけの我慢大会に何の意味があるのか。
気がつくとこの登り坂の出口が見えていて、稜線の上からこっちに来る人がいた。その登山者はどうやら稜線の途中で登頂を断念して引き返して来たらしく、ずっと先頭でラッセルしていたのでもう足が限界との事だったとのこと。ここから山頂までのコースタイムは1時間だが、雪が更に深くなるから3時間ぐらいかかるのではと言っている。山頂に行ってここに戻って来るだけで6時間の計算だ。馬鹿げているけど、そう言う事なんだろうと現実を受け入れた。
なんとか稜線上に上がると前方に巨大な笠ヶ岳が現れた。雲海の上に巨大な笠ヶ岳が浮かんでいて、その山頂まで天空の白い橋の様に稜線が続いている。凄い光景だった。行かなくていいのかと自問自答した。さっきの人はツボ足だったけど、こっちにはワカンがある。トレースもある。こんな天気でここまで来れて、未踏の笠ヶ岳を冬に登頂出来るかもしれないまたとないチャンスだ。本当に行かなくていいのか。いつもの自分ならこれまでの辛さなんて忘れて、後先考えずに行ってしまっただろう。
しばらくすると我に返り、こんなの登頂して何になるんだろうと思った。笠ヶ岳なんて雪が積もってるとは言えただの百名山。誰でも登ってる人気の山だ。登頂したとこで名誉でもなんでもないし、雪が積もってるからと言っても、ただの自己満足でしかない。まわりの人に話したところでこの大変さは伝わらないだろうし、逆に白い目で見られるだけだ。自分はアルパインクライマーでもあるまいし、アスリートでもない。私にとって山登りは運動をしてこなかったデブなサラリーマンとおさらばする為の高尚な趣味であり、運動不足とストレス解消と風景写真を撮るのが目的のただの週末ハイカーなわけで。最近良く北アルプスを登ってるからって勘違いするなよって自分に言いたくなった。
オマエになんかあったら、今週誕生日を迎える娘はどう思うのか。これから家族はどうなるのか。会社だって別にオレが突然いなくなったとこでどうにかなるんだろうけど、どれだけの人に迷惑をかけるのか。そして何より苦しさと不安が楽しさを上回ってしまっている事が問題だ。
もうこんな山登りはやめようよ。誰の為に、何の為に山を登っているんだ。
正直悔しいし、こんなとこで引き返すなんてやっぱありえないけど、でもどう計算しても時間が合わないし、今日は最初から色々失敗続きでこんなの理想とは程遠い登山だ。山登りが好きでもしプライドがあるならやはり引き返すべだ。足腰を鍛えて体力もつけて、それ相応の実力になってからまた出直すべきだ。
もうこんな登山はやめよう。こんな登り方はやめようと自分に何度も言い聞かせていると、だんだん気が楽になってきた。
それにしてもここは本当に凄い場所だ。笠ヶ岳だけじゃなく、その向こうに白山も、振り返れば槍ヶ岳も、穂高の山々も、北アルプスの山々も全部見える。どれも白く衣替えしてどうしようなく美しい。そんな山達にまた登りに来なよ、山登りってもっと楽しいもんだよって。言われてる気がした。
そっか
じゃあ今日は抜戸岳で飯でも食べてのんびりと帰えろう
AM4:30
・寝坊してしまい新穂高から予定より1時間以上遅めのスタート
・笠新道までの林道がなかなか長い
・AM5:20やっとで笠新道登山口。ここからが本番
・岩多めの登り坂
・明るくなって来た。この辺で凄い勢いで登っていく三人組に抜かれた。トレースつけてくれるから有難い。
・穂高連峰出現
・雪山装備はやっぱ重い…
・モルゲンな乗鞍
・それにしても景色がスゲー
・槍サマ
・ボチボチ雪が出て来た。
・あの上までいく事になるんだろうなぁ。やっぱ笠新道はエグいわ
・どんどん夜が明けていく
・朝日が
・キレイ
・とてもキレイ
・頑張らねば
・でも実はかなり疲れてる。休憩
・雪が増えてきたな。歩きづらい
・2200m地点。色々一望と書いてあるけど
・そこまでは見えてない
・全然上が近づかない
・結構ズボズボに。牛歩で全然前に進まなくなる
・もうどれぐらいこの雪の急登を登っているのか。キリがない。ツボ足でなんとか登ってます
・マジで辛いです(汗。相当時間たってるだろうし杓子平に着いたら真面目に引き返すか考えないと
・AM8:35笠新道を登りきってやっとで杓子平
・遂に笠ヶ岳出現。そこまで雪は多く無さそうに見えます
・笠ヶ岳に続く稜線。休暇して眺めてたらなんか行けそうにも思えて来た
・そして再び歩きだす。このカールを抜けてあの稜線の上へ。笠新道程辛くない様な気がして来た
・ダメだ、ズボズボ。膝上まで埋没
・先に行った人のトレースがあるが救い
・景色が物凄い
・そこまで寒くもないしむしろ暑い。雲海がいい感じ
・この登りスゲー辛い。結構な登りだ。踏み抜きまくりでまあまあ地獄…
・杓子平を振り返る。広大です
・ただただ辛くて景色を楽しむ余裕がない
・両腿が攣った。回復するまでひたすら休憩。なんで杓子平で引き返さなかったんだろうって後悔中
・牛歩でヨチヨチ進む。全然稜線が近づかない
・うぅぅぅ、もうダメかも…。とりあえずここまで来たからなんとか稜線までは行きたい。あともうちょいのはずだけど…
・私の大分先を進んでた先頭の人が引き返して来た。稜線はもっとヤバいらしくて登頂を断念したとか…
・AM10:40 なんとか稜線まで登りきった。目の前に巨大な笠ヶ岳が出現。凄い迫力。このまま行ってしまおうか立ち止まったまま葛藤が続く
・悩んだ結果行くのはやめて近くにあるピークの抜戸岳へ向う
・近くなんだけど、やっぱズボズボで踏み抜きまくりで全然前に進まない。笠ヶ岳へ稜線もこんな感じなんだろう。やっぱ無理だったわ
・AM10:57抜戸岳へ到着
・双六に続く稜線。裏銀座方面を一望。
・本当に凄い場所だった
・未踏の赤牛
・西鎌尾根
・乗鞍方面も素晴らしい
・乗鞍アップ
・笠ヶ岳がやっぱ凄い
・その背後に白山。白山にも久々に行きたいなぁ
・北アルプスの百名山で登れてないのは後は笠ヶ岳だけ。簡単には登らせてくれなかったか。まずは夏かな
・じゃあ帰ろう。ちょうどガスって来たし、帰れってことやね
・めちゃガスってきてる〜
・下りは楽なのかと思いきや、踏み抜きまくりで帰りも辛し
・撤退して正解だった
・帰りも杓子平に全然着かない
・もっと強くなって、経験を積んでまた出直すしかない
と強く思わされた1日でした。
ではでは