北穂高岳(標高3106m )
涸沢岳(標高3110m )
南岳(標高3033m )
登山日 2022/9/25(日)
総歩行距離 26.2km/累積標高差↑2810m↓2810m
体力度★★★★★
危険度★★★★★
絶景度★★★★★
※あくまで個人的な感想と計測
【コースタイム 】
新穂高センター→槍平山荘→南岳→大キレット→長谷川ピーク→北穂高岳→涸沢岳→穂高岳山荘→白出沢→新穂高センター
・トータルCT19:40 →結果15:28
※トータルに昼休憩時間は含まない
【登山口と駐車場】
登山者用の無料駐車場は新穂高センター手前のトンネルの途中から深山荘の方へ曲がるとあります。150台は停めれます。でもすぐ満車になります。満車の場合は新穂高センターの近くに有料駐車場がいくつかあります。新穂高センターに24時間使用可能な綺麗なトイレがあります。夏季は無料駐車場の真ん中辺りに仮設トイレ有り。
【地図等の詳細データはヤマップにて】
https://yamap.com/activities/19819405
北アルプスには三大キレットと言う、簡単に言うとチョット危なくて有名な場所がある。
一つ目は後立山連峰の唐松岳の近くにある不帰ノ嶮(かえらずのけん)。
二つ目はこれもまた後立山連峰の鹿島槍ヶ岳と五竜岳の尾根の間にある八峰キレット(はちみねキレット)。
そして最後は穂高連峰の大キレット。穂高岳と槍ヶ岳の間に見えるでっかいアーチみたいな稜線、それが大キレットだったりする。
キレットとは山と山の間の稜線が深く落ち込んだ場所の事を言うらしく、離れて眺めるとでっかい吊橋の様にも見える。大キレットは蝶ヶ岳や涸沢等から良く見えるから、見た事ある人は多いのでは。
僕はこの大キレットの存在を漫画の「岳」で知った。登山者が信じられない様なピンピンの岩のナイフリッジにしがみつきながら進んでいると案の定滑落してしまい、主人公の三歩さんが助けに行くみたいな展開。でもここ、落ちたらまず助からないんだよね。
北アルプスなんてほぼ行った事無くて、穂高岳にも登った事も近づいた事もない僕には未知の世界だったから、北アルプスにはこんな映画みたいな恐ろしい場所があるのかと思いつつ、自分には関係ないことだとずっと思っていた。
富山に来て2年が過ぎ、おかげさまで北アルプスの山を色々と登る事が出来、知る事も出来た。それなのに三大キレットは何故かまだ一つも歩いた事がなかった。
もしかして怖い?
はい、実と言うとチョットだけ怖い。でも僕もそれなりに経験値は積んで来ているつもりだから実はそこまでビビってはない。じゃあなんでこれまで三大キレットに行かなかったのか、
それは、三つのどれも日帰りするのは無理だと思ってきたから。とにかく距離が長くてハードらしくて、体力と時間がかなり必要とのこと。稀に日帰りで行ってしまう屈強なハイカーもいるみたいだけど、三つとも一泊か二泊して行くのが通常。しかも山を登ってキレットを抜けて下山した後の交通の問題も地味に敷居を上げていて。
これまで日帰り専門でやって来て、小屋泊が嫌で、テント泊初心者の僕には行きたくても後回しにするしかなかったから、そのうちテントを担いでゆっくりと挑もうと思ったりしていた。
2022年晩夏
続く悪天候のおかげで溜まりに溜まったフラストレーションを払拭するべく、この夏も目標登山を敢行する事にした。昨年はなんとか水晶岳を日帰りした。あまりの過酷さにもうこう言うのはやる必要はないと思っていたけど、やっぱりどこかの山を死ぬ気で登らないと自分の中で夏が終わる気がしない。
そして、オッサンでもやればできると日帰りで不帰ノ嶮と八峰キレットの踏破に成功して気を良くした僕は、最後の大キレットのコースタイムを見て愕然とした。
前者二つはコースタイムは15〜16時間程。それに対して大キレットは20時間弱。距離も26kmとかなり長い。他にいいルートはないかと地図を眺めたけど、大キレットを通過して最短距離でまた駐車場に戻って来る為には新穂高からスタートするこのルートしかないみたい。しかもこの新穂高日帰りルートには距離だけじゃなくて他にも悩ましい問題があって。
それは、大キレットの他にも北穂高岳から涸沢岳間の危険で険しい岩稜エリアの通過と、奥穂高岳に直登するルートである白出沢(しらだしさわ)と言う上級者向けのほぼバリエーションルートを通らなければならない事だった。どれも北アルプス屈指の難所だったりする。
これまで大キレットについてあまり調べて来なかった僕は、調べれば調べる程この日帰りの無謀さに気付かされ、やる気がどんどん失せて行った。
不帰ノ嶮と八峰キレットは危険箇所もわりと一部ですぐに終わったし、所々走れる場所もあったりしてタイムを稼げた。でも今回はルートの大半は岩稜帯なので時間短縮出来る場所は最初の林道だけでほぼないだろう。
まぁ無理だろうけど、仮に頑張ってコースタイムの8掛けで歩けたとして単純計算すると、朝3時スタートで帰って来るのは夜7時。これに休憩時間が加わるといったい何時になってしまうのか。せっかく二つのキレットを苦労して日帰りしたのに最後の最後にこんなのが待ってるなんて。そんなに世の中甘くねーって事か。
無理に日帰りなんてしなくても、去年からの想定通りテントを持って行けばいいじゃないか。だとしてそもそも僕の重たいお泊まりセットを担いで大キレットや危険地帯を通過出来るのか。考えれば考える程大キレットの踏破は遠のいていく。
この日曜はこの上ないぐらいの秋晴れの予報。大キレットに挑むにはまたと無いチャンスで、これ以上のタイミングは今年はもうないかもしれないんだけど、いったいどうすればいんだろうか
・前日入りして新穂高センターのとなりにある中崎山荘奥飛騨の湯へ。毎回何故か閉まってずっと入れなかった温泉。なんと今日はまだ営業しているではないか
・受付時間ギリで入ったから貸し切り状態〜
・凄い泉質!白い沈澱物は湯の華。ちょっと量が多すぎる様な。ゆっくり浸かって明日の大キレットに備えます
・温泉に入った後、無料駐車場に向かうとまだ6時半なのに満車(汗。人気エグすぎ新穂高
AM2:15 新穂高センター
・なんとか起きれた。朝弱い僕がこんなに早出するのは人生初
・トイレって準備完了。がんばりMAX
・AM2:30 チャレンジスタート。こんな真夜中なのに意外と出発する人がいるもんで(汗。北アルハイカーの皆さん流石です
・漆黒の林道をひたすら進む。途中にライトつけずに歩いてる人が突然現れてビビる(汗
・今夜は星が本当に凄い。iPhoneで撮ったからノイズ多め
・奥穂高岳に直で登れる白出沢ルートの入口。先にこっち側から登って、大キレット抜けて槍平から帰ってくる方が楽そうな気がしたけど、ヤバそうな白出沢を闇の中登るのはかなり気が引けるから、やっぱ先にイージーな槍平方面へ向かう事にした
・闇の中を歩くのだんだん飽きて来た
・このルートを歩くと、いつもこの橋が流されて無くなってるんじゃないかとドキドキ
・やっとで夜が明けてきた〜
・明るくなるとホッとする。もう槍平に着くはず
・AM5:20 スタートして約3時間、やっとで槍平山荘。ちょっと朝飯食べます。今日初めて槍ヶ岳を登る群馬の青年と交流。僕も大キレットじゃなくてこのまま槍に行ってしまいたい気分
・テーブルとベンチは霜がはって冷たそうで使えず。ていうか朝は寒すぎる
・AM5:36 休憩したら槍平山荘から南岳方面へ。間違って槍ヶ岳方面に行ってしまわない様に注意
・南沢と言う場所を抜け
・ひたすらずっとずっと樹林帯登り
・1時間半程登るとやっとで森林限界へ
・笠ヶ岳がヒジョーに立派!本日のルートは飽きるぐらい笠ヶ岳が見えまくる
・その横にみんな大好きな双六や三俣が。あっちには今年行けてないなぁ。行きたくなって来た
・あれは南岳と槍ヶ岳の間に位置する中岳と大喰岳。こちらもご立派。いつか行かないと
・そんで本日の目標はあちらに見える北穂高と涸沢岳。意外と遠いし、かなり物々しい雰囲気。本当に辿り着けるのか
・南岳登山は意外にもアルプス感が溢れてていい感じ
・何故か救急箱が。こんなの山で初めて見た。この先ヤバいって事でしょうか
・結構な高度感。こんなに登って来たとはねぇ
・進行方向に激しそうな岩陵帯が…
・と思ったらハシゴで下りて
・岩稜帯ではなくカールの方へ向かう。でもなんか道が途中で途切れてません?どうやって上に行くんやろ
・ハァー(汗
・メチャクチャ登るやつ(汗
・振り返るとカールがいい感じ
・かと思ったら、上に向かうのではなくカールを横切って横方向へ。ちょっとホッとする
・しばらく進むとやっぱり岩場をひたすら上へ(汗
・稜線が落ち込んだ部分がこれから向かう大キレット。凄いアングル
・スグソコ詐欺
・遂に槍もお出まし!
・AM8:17 そしてやっとで南岳小屋へ〜。もちろん疲れまくりました(汗
・南岳小屋は予想以上に立派でかなりいい感じだったりする
・豚汁モーニングすげーそそる。でもそんなにゆっくりしている時間がなくて断念…
・豚汁食べる時間はないけど、大キレットと逆方向にある南岳のピークはなんとか踏んでおきたいと思いまして
・すぐかと思ったら地味に登るし
・AM8:40 南岳の山頂でございます〜
・槍とヤッホイ!
・南岳は中々の絶景ポイント〜
・富士山も見えるなんて、なんて日だ
・ここから見る北穂がカッコ良すぎて〜
・南岳小屋に戻ってメットを装備。大キレットに向けてスタンバイ
・サラバ南岳!生きてたらまたいつか来ると思う。次はテント持ってカミコーチから来るわい
・AM9:00 いよいよ大キレットへ侵入。ミッションスタート
・ザレ場をガーっと下って
・ただただカッコいい!
・崖的なとこを激下りモードで
・下りてきたとこを振り返る。スゴっ(汗
・大キレットを行く。特に危険も無くフツー。手前に見えるピークが恐らく有名な長谷川ピークかも
・大キレットのスタート地点を振り返る。イカツイ岩山みたいでモエモエ
・これ無くても誰も迷わんから
・意外とデカくて中々近づかない長谷川ピーク
・しかもメッチャ登るし(汗
・スゲーとこ登ってる〜
・AM10:05 長谷川ピークに到着!正直疲れただけでそんなに怖くもなんともありませんでした〜
・と思ったら、いきなりチョット雰囲気が変化
・ヒエ〜、下を見てはダメっ!
・最近重大事故があったのはまさかこの辺なんかなぁ…
・コレを下りるのか…、正直怖い。久々に自分が高所恐怖症だった事を思い出す(汗
・多分ここや!漫画の岳で見たとこ
・なるほど、これが大キレットなのですね
・いつもみたいに楽勝って感じでは決してない
・コルって事はここが最低地点ってこと?
・そして目の前に北ホがドーン(汗。どうやらあのてっぺんまで行かされるっぽい
・目の前の崖を行けと?
・崖登り開始。前穂の登りより急かもです
・大キレットと、さっきいた長谷川ピーク。先っちょピンピンなのが良く分かる構図。長谷川ピークを通過してる人達が見えて落ちるんじゃないかとヒヤヒヤ(汗
・そしてどんどん高度を上げて行く
・不安になるぐらいマジで凄い場所。日本の山にこんな恐ろしくも神々しい場所があったなんて…。ジャンダルムを思い出す。本当にこの先に行けるのか
・またヤバそうな鎖場が…。慎重に
・どうやらさっき通ったとこが飛騨泣きって言うとこだったっぽい。確かにあぶねーとこではあった
・ひたすら崖をずっとよじ登る感じで結構激しめ
・何回も来た道を振り返ってまう。冗談抜きで凄い景色。高度上昇中
・北穂山頂小屋や滝谷ドームが見えた!
・もちろん覗きますよ
・穂高連峰って本気で凄い場所!この崖を登ってるクライマーもいたし。本当にこのエリアはどうなってんだろ
・いやー、岩場登り過ぎてシビれるし(汗。マジで疲れて来た。でもゴールはまだ結構上
・後200m詐欺
・やっとで小屋が近づいてきた〜
・AM11:40 北穂小屋にとうちゃく!なんて平和なとこなんだろう。さっきの崖登りとのギャップが凄すぎて頭の切り替えが追いつかない
・おねーさんが 売店で挽きたてのコーヒー入れてます〜。でも僕はヌルいお茶で我慢
・AM11:50 少し小屋で休憩したらすぐ上の北穂高岳の山頂へ〜。ここに来るのは二回目
・遂に大キレットを歩いて抜ける事が出来ましたー!別に大キレットなんて大した事ないって言う人もいるけど、他のキレットよりかなり手応えがあったし全然怖かったかもです〜(汗。でもなんだかんだで凄く楽しかった!
・実はこれで終わったわけではなくまだ先は長い。次は涸沢岳を目指してなんとか穂高岳山荘から下山しなくてはならないのです…
・涸沢岳や穂高岳山荘までそんなに遠くないはず。時間も押してるからサクッと着くといいな
・早速地味にヤバそう。下手したら大キレットより涸沢岳までのルートの方が危ないって聞いた事あるし
・うーん、険しい…。あの岩場を越えて下りて行くっぽい
・下りるのに地味に気を使った(汗。
・お次は崖に沿って横へ
・落ちたら死ぬ。こんな状況がずっと続いてる…
・本当にずっと気が抜けない状況が続き、もし帰れなかったらどうしようって、本気で身の危険を案じ始めてきた
・今通ってたとこが奥壁バンドだったのか。どおりで…(汗
・涸沢がとても綺麗に見えます!紅葉シーズンでボチボチ混むはず
・コルって事は、またこれから登るって事なん?
・うわー、マジでこんなに登るんか。涸沢岳が予想以上に巨大…。
・しかもとんでもねー崖登りやし(汗
・鎖にしがみつきながら崖を登って行く。例え辛くても、この状況を楽しむしかない
・下見るとゴイスー(汗
・振り返って北穂高
・激登りハンパねーし!
・無心でひたすらよじ登る(汗
・今日は本当にワンミスであの世に行けるとこ続き(汗。感覚がマヒる
・フラフラになりながらなんとか岩壁を登りきると
・PM14:00 やっと涸沢岳に登頂完了!予想以上に手強すぎた〜。ぜんぜん甘く無さすぎて泣けるわ!
・穂高岳山荘がすぐそばに見えてホッと一息
・PM14:18 なんとか山荘に到着。この山荘に来るのは実は初だったりする。凄いメジャーな小屋なのに
・とても綺麗でいい雰囲気。泊まれるなら泊まってしまいたい
・まだ終わってないけど、ご褒美CCレモン!下山様にポカリもついでにゲット。それにしても本当に疲れた。時間かなり遅いけど、流石に昼飯を食べないと白出沢を下山出来る自信がない
・涸沢を眺めながらオニギリを食す。本当にいい天気で今日は助かった
・時間あれば奥穂に寄る予定だったけど、時間なんてあるわけないし、意外と奥穂遠いみたいだし、明日は会社でお偉いさんにプレゼンがあるんで今日はやめときますわ…
・PM14:50 では、後は白出沢から下山するだけ。最後も気を抜かずに。何事も無く下山出来ますよーに
・このルートあんまりいい噂聞かないんだよなぁ…
・なんじゃこりゃ。岩ゴロゴロやし(汗。しかもとんでもねー激下り
・穂高岳山荘を見上げる。本当にとんでもなく急(汗
・下から雲が迫ってくるし
・すれ違った人に下まで下りれるか一応確認。どうやら大丈夫とのこと
・それにしても浮石まみれでエグい。適当に足を置くと崩れまくって怖い(汗。ジャンダルムのとこの天狗沢にクリソツ
・PM16:08 ここまで来るとやっとこさ怒涛のゴロ岩ゾーン終わり
・そして樹林帯へ。後は長くても平和に下りたいところ
・と思ったら再び沢的なとこに出て、鎖で崖みたいなとこを激下りさせられる(汗
・沢へ下りると今度は谷間の壁沿いの道へ。ザレまくりで滑り落ちそう。鎖にしがみつきながら…
・地味に怖い超ロングロングハシゴ。下の方はハシゴが無くなっててステップに変化
・その後はずっとこんな感じ。やっぱ噂どおり白出沢は個性豊かな無茶苦茶なルート。こんなルート歩いた事ないし(汗
・PM16:56 もしかしてこれが噂の重太郎橋なんですか?橋って言うかただの木の棒。流されてなくて本当に良かった
・後はひたすら樹林帯。岩が滑りまくりで
・樹林帯長すぎ!マジでキリがねぇ。ヘロヘロ
・PM17:40 最初の樹林に生きて無傷で帰って来た〜!
・日が暮れそうですけど、後は本当に気楽でもう終わった様なもの。後は軽くランニングしながら。てか、走る気力がまだあったとは…
・PM18:24 遂に新穂高に帰還!ミッションコンプリート〜!最後は日が暮れたけど、この時間に帰ってこれたなら万々歳〜
今年も、葛藤した挙句に非現実的な目標登山を思いきって敢行!そして無事にクリアしました〜。
3週連続での連発キレットは過激で激しすぎたけど、険しくも美しい北アルプスの絶景を全身に浴びて、北アルプスの凄さを改めて再認識。
今回の目標登山にて、日々努力を重ねながら危険も苦しみも恐れずにチャレンジしないと見れない景色があると言う事を改めて実感。
北アルプスってやっぱり凄い!
ではでは
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